第14章:石の碁盤遺跡の謎
遺跡への旅立ち
デート3日目の朝、真星とリリア王女はラグナ島北部の「石の碁盤遺跡」へ向かった。遺跡は緑豊かな森の奥深くに位置し、普段は観光客の立ち入りが制限されている。特別ガイドの案内を受けながら進む道中、2人は軽快な会話を楽しんでいた。
「この遺跡は、ラグナの囲碁文化において特別な場所なんです。海辺の石の碁盤と遺跡の碁盤がどう繋がるのか、興味深いですよね。」
リリアが説明すると、真星は興味津々な表情で頷いた。
「囲碁の歴史を遡る旅なんですね。昨日の海賊船博物館で見た石の碁盤と、どんな関係があるのか確かめたくなります。」
ふとリリアは足を止め、真星の方を向いた。
「囲碁の発祥についてですが、セリア国から始まったという説が有力ですよね。」
「はい。セリア国で生まれた囲碁が長い船旅を経てアジア中に伝わったと習いました。」
「昔々、航海中の人々が木の板盤と小さな石で囲碁を楽しんでいたんでしょうね。想像するとロマンチックです。」
リリアは遠くを見つめながら微笑む。その言葉に、真星もその歴史の深さを感じながら歩を進めた。
遺跡に刻まれた古代の碁盤
やがて遺跡に到着すると、中央には巨大な石の碁盤が据えられていた。周囲には小さな石柱が並び、それぞれに囲碁の局面を思わせる彫刻が施されている。
「これが石の碁盤です。ラグナ島の文化の中心であり、囲碁のルーツを感じることができます。」
ガイドが説明を始めると、真星は石の碁盤に近づき、その盤面をじっくり観察した。
「この模様、昨日の海賊船博物館の碁盤の模様と少し似ています。でも細部が違う気がしますね。」
真星がつぶやくと、リリアは盤面を指でなぞりながら言った。
「ここには古いラグナ語で『交わる道』と刻まれています。囲碁を指しているのか、それとも地図のような意味なのか…解釈は分かれていません。」
「セリア国や他の国々でも、こうした石の碁盤の研究が進められているんですか?」
真星が尋ねると、リリアは頷いた。
「ええ。セリア国、シャンル国、カリスタ公国、それにヤマト国でも、石の碁盤の研究が進んでいます。それぞれの研究者たちがラグナ大学と情報を共有していて、囲碁の歴史が少しずつ明らかになってきています。」
「国際的な協力が進んでいるんですね。そういう取り組みが、未来の囲碁文化をさらに豊かにしてくれるんだと思います。」
真星の言葉に、リリアは嬉しそうに頷いた。
展望台での対話
遺跡の探索を終えた2人は、近くの展望台で休憩を取った。そこからは青い海とラグナ島全体が一望でき、息を呑むような絶景が広がっていた。
「真星さん、この3日間、本当に楽しかったです。囲碁を通じて島の歴史や文化をもっと知ることができました。」
リリアは穏やかな声で語りかけた。
「こちらこそ、リリア王女に案内していただけて感謝しています。囲碁がこれほど多くの人を繋ぐ力を持っているとは思いませんでした。」
真星も感謝の意を込めて答えた。
少しの沈黙の後、真星がリリアに尋ねた。
「リリア王女は、これからどんな夢を持っていますか?」
リリアは少し考えた後、静かに答えた。
「今は海外の大学で環境について学んでいます。それを活かして、ラグナに戻り、お父様を手助けするのが夢です。たくさんの人々が観光に訪れても、ラグナが自然豊かな島であり続けられるように働くことが私の使命だと思っています。」
「それは素晴らしい夢ですね。環境を守るために学び、そして自分の国に貢献するなんて、本当に尊敬します。」
真星の言葉に、リリアは照れくさそうに笑った。
「真星さんもきっと囲碁を通じて、たくさんの人々を繋げていくんでしょうね。」
2人の会話は尽きることなく、自然と心の距離が縮まっていった。この友情が、国際的な囲碁文化をさらに豊かにしていくことを、2人は確信していた。