デートの計画と国民への協力依頼
デートを円滑に進めるため、ラグナ王室は国民や観光客、そしてマスコミに向けて公式な協力依頼を発表した。
「優勝者とリリア王女の3日間のデートは、2人だけの特別な時間となるよう、どうか温かく見守ってください。」
さらに、リリア王女自身もSNSでコメントを投稿し、親しみやすい口調で約束した。
「1日1~2時間に1回、私たちのデート写真をSNSにアップします。皆さんにその瞬間を共有することを楽しみにしています!」
この発表により、SNSは再び盛り上がりを見せ、国民たちも協力的な姿勢を見せていた。
1日目のデート:島の電車で一周
デート初日、特別に飾り付けられた観光列車の車両が2人のために用意された。花や島の特産品をモチーフにした装飾が施され、隣の車両とはカーテンで仕切られている。
緊張気味の藤倉真星は、音声通訳機をセットし、リリア王女との英語での会話に備えていた。
「真星さん、この電車は私たち島民にとって大切な交通手段なんです。観光客の方にもとても人気があるんですよ。」
リリアが笑顔で話しかけると、通訳機がすぐに日本語で訳した音声を伝えた。
「そうなんですね。この電車に乗ると、ラグナがどれだけ自然と調和しているかよく分かりますね。」
真星は通訳機越しに答えながら、窓の外に広がる美しい景色に目を奪われていた。
「島の景色、どうですか?」
「素晴らしいです。久しぶりにリラックスした時間を持つことができて、とても新鮮です。」
真星の答えに、リリアは嬉しそうに微笑み、2人の距離は少しずつ縮まっていった。
ルルム山のケーブルカーデート
初めに訪れたのはルルム山の入り口だった。
「ラグナにはハイキングにちょうど良い山もいくつかあります。今回は山頂まで登る時間はないので、ケーブルカーでご案内しますね。」
ケーブルカーに2人で乗ると、観光客が手を振ってくれ、それに応える形で2人も笑顔で手を振り返した。
「ルルム山は勝負の神様の山と言われていて、スポーツ選手から人気の山なんですよ!だから、真星さんをお連れしたかったんです。」
「それは嬉しいです。」真星は笑顔で答えた。
「山頂から海辺を見下ろしてください。あの丸い離れ岩の辺りで、願いを念じると叶うと言われているんです。」
リリアが指差した先には、美しい丸い離れ島が見えた。真星は目を閉じて静かに願いを込めた。
山頂で撮った写真を2人でSNSにアップすると、すぐに大きな反響を呼んだ。
市場での食べ歩きデー
その後、列車に戻り、次に向かったのは島で最も賑やかな市場だった。新鮮な魚介類や果物、手作りのお菓子、特産の真珠のお店が並び、観光客にも地元の人々にも人気のスポットだ。
「これ、試してみてください!ラグナの名物、ココナッツ風味の焼き菓子です。」
リリアが屋台で購入した焼き菓子を真星に差し出す。
「ありがとうございます…うん、すごく美味しいですね!」9
真星が笑顔で焼き菓子を頬張る様子に、リリアもつられて笑った。
そんな中、少し離れた場所でサングラスをかけた護衛が2人の様子を伺っていた。しかし、その動きにリリアは気づいてしまう。
「もしかして…お父様!?護衛の服を着て何をしてるんですか!」
リリアは驚きつつも怒りを隠せない。真星はその様子に戸惑いつつも、笑いを堪えられなかった。
「いやはや見つかってしまったか。どうにも直接2人の様子を見たくなってな。」
王様が弁解すると、リリアはさらに怒りを募らせる。
「2人でデートを楽しむように言ったのはお父様でしょ!」
リリアの怒りに、王様はたじたじとなり、真星に助けを求めた。
「真星君、助けてくれないか?」
「リリアさん、そんなに怒らないでください。」
真星が穏やかに言うと、リリアも少しずつ怒りを鎮めた。
この様子は観光客に激写され、SNSには「王様の変装バレ」「リリア王女、大激怒!」といった投稿が次々とアップされ、大きな話題となった。
王宮での歓迎会
デート1日目の締めくくりは、王宮での歓迎会だった。リリア王女の家族が勢揃いし、真星を温かく迎えた。緊張する真星の隣には、ヤマト国の言葉を話せるリリアの兄が座り、リリアの家族を一人ずつ紹介してくれた。
リリア王女は7人兄弟で、姉3人、兄3人の末っ子だった。長女の息子である6歳のルルド王子は、大興奮で真星に質問を投げかけた。
「どんな囲碁の勉強をしてますか?」
「いつもは師匠の道場で、仲間と早碁を打ったり、AIを使って試合を研究しています。」
真星の話に目を輝かせたルルド王子は、「僕も道場に行ってみたいです!」とさらに興奮した様子を見せた。
「ぜひ来てください。プロを目指している小学生もたくさんいますよ。」
真星の優しい返答に、ルルド王子は喜びの声を上げた。
「明日もぜひ、ラグナの魅力をお楽しみくださいね。」
王妃が声をかけると、真星は深々と頭を下げ、感謝を述べた。こうしてデート1日目は和やかな雰囲気の中、終了した。
デート初日は笑いと驚きに満ちた、心温まる1日となった。翌日、真星とリリアは秘境「エメラルドの谷」へ向かう予定だ。果たしてどのような冒険が待ち受けているのだろうか?